なぜ、鍼の本数は少ない方がいいのか
前回のブログでは痛みと動作についてお話しました。
今回は鍼の本数についてお話をしていこうと思います。私自身、今の治療法に出会うまでは鍼の本数も多かったと思います。腰痛や肩こりに関しても、15本~20本程は一度の治療で使っていました。
整動鍼を学ぶ前は、患者さんの痛みや不快感、主訴に関係するところに直接、鍼治療をしたいました。当時は動きの改善より痛みの改善に意識を集中していましたので、患部に鍼をして「まだ、痛みますか?」と声を掛けていました。
だいたい返ってくる答えが「まだ、痛いです」そうなると、また痛い部分に鍼をしていきます。自然と鍼の本数も増えてきます。
この、一見すると普通の行為が患者さんに痛みだけを集中させ、たくさん鍼をすることにより、自然回復力の妨げをしていた事に気ずきました。
では、なぜ鍼の本数が増えるといけないのでしょうか?
痛み・コリの正体
痛みやコリの原因は身体の歪みが関係しています。歪みは筋肉の連動性が崩れたときに発生しやすいです。
例えば、靴擦れをして変な歩き方をしていたらいろんな所が痛くなってきた・・・
ぎっくり腰は治ったが、なんとなくスッキリしない・・・
このように怪我などで負傷した部分に特定の動作をしないように、脳が命令することがあります。わかりやすく言うと「かばう」ことになります。怪我が短期間で治り、連動がすぐ元に戻れば問題はありませんが、バランスが崩れた状態の動きがクセ付くと特定の場所に負担がかかり、痛みやコリが発生してきます。
鍼治療の役目
では、このような歪みにより連動性を失った身体をどのように回復させるかというと、鍼治療でツボに刺激を入れます。鍼治療をすることにより、失っていた連動性を取り戻します。そうすることにより、連動がうまくいかず、ギクシャクしていた関節や筋肉がスムーズに動き出します。
「ツボへの鍼刺激」
↓
「身体をこのように動かしましょう」
このような形で鍼刺激は脳まで伝わります。メッセージといっても、鍼を1本身体に刺入することは、脳に対して、かなり強制的な力を発揮します。メッセージより命令に近いかもしれません。
このように、鍼1本が身体に与える影響は大きく、身体全体のバランスに影響を与えます。
鍼治療の弱点
鍼1本が身体に与える影響についてお話しましたが、ここから問題の鍼の本数が1本、2本、3本と増えていく場合です。
1本でとても効果のある鍼治療です。そこに、2本目をなにも考えずに「ここが痛いと言っていたから鍼打とう」「今日はサービスで、もう1本追加だ」(サービスで鍼の本数を増やす先生はいないと思いますが)
身体は1本目の鍼の命令に従っている状態です。せっかくいい状態に戻っていたのに、2本目でバランスが崩れた・・・という事にもなりかねません。それが10本、20本などの増えていくと、脳はもう、大パニックです!!
鍼の本数を増やしていくと、効果が曖昧になり、せっかく良くなっていた、最初の症状まで戻ってくる現象が起きてしまいます。
少ない鍼で効果を出すには
このように、鍼1本で身体に変化を出せる鍼治療は、とても身体に優しい治療法だと感じています。鍼1本の効果をきちんと、引き出せる鍵はやはり、ツボの正確さだと感じています。
ツボの位置が3ミリずれると、目的の効果は半減するか、まったく違う作用をしてしまいます。
たくさん鍼をすると、必然的にどれかが、作用してほしいツボに当たるかもしれませんが、再現性も低いうえに脳がパニックを起こし最初の症状が戻ってくるリスクもあります。
ツボ選びとツボを見つける技術には磨きをかける必要性があります。
技術論になりますと、さらに話が長くなりそうなので、今日はこの辺で。
次回はマッサージでツボを刺激するのと、鍼でツボを刺激する違いについてをお伝えしたいなと思います。